6日間の旅の最終日。朝、7時の飛行機で成田に帰るだけのスケジュールだった。朝、5時に、ホテルのロビーで待ち合わせ、飛行場まで乗せてもらった。
ぼくは、前夜、どのタイミングで、お礼のお金を渡せばいいか悩んだ。 朝、飛行機までの車の中で、通訳のHに有り難うと、気持ち程度のお金を渡すつもりだった。
しかし、予想もしなかったことに、朝5時はモンゴルでも真っ暗だ。車の中で、財布からお金を出そうと思ったが、真っ暗で中味が見れない。(しまった。事前にお金をよけておけばよかった。失敗。。。。)
空港についた。運転手のジョロチュは僕の荷物を車から降ろすと、一言言ってどこかへいってしまった。その後、姿を見せることはなかった。「有り難う」と一言言いたかったのに、タイミングをいっしてしまった。
チェックインで長い列に並ぶ。ほとんどが日本人のようだ。その中にお世話役のモンゴル人と別れを惜しんでいる人たちもいた。通訳のHさんは私に付き添ってくれているが、チェックインと共に、出発ロビーに移動しなければならなくなるので、ここで通訳のHさんと別れることになる。この場でお金を渡したら、他の旅行客や同業のモングル人がいる手前、Hさんも困るだろう。
(でも、このままでは心残りになると、思った)
「トイレに行きたいやけど」通訳のHに言って、列から離れて、トイレに行った。そこで、日本の小説の単行本の数ドル札をはさんだ。
トイレから戻ると、通訳のHさんに「この本あげるよ。」と渡した。通訳のHさんはその本を手にすると、中をパラパラ開き、お札がはさまれているのに気づくと、あわてて本を閉じた
「日本にきたら、食事でもご馳走するので連絡ください。今まで、(ぼく一人の)面倒を見てくれて有り難う」とお礼を言った。Hさんも「もっと、モンゴル語を話せるようになって、今度はモンゴル語で話しましょう」と。
6日間ずっといっしょにメシ食って、行動した訳だから、別れが悲しい。ほんとによく面倒を見てくれた。完璧だった。
「バイラーラ(有り難う)。バイシタ(さようなら)」 |